96才で受け入れ先があるかどうか心配したが、3つ目のトライで近所の総合病院へ。深夜にもかかわらず、CTとMRIの検査をしてもらえる良心的なところだった。
脳梗塞。癌や老衰の血筋のため、想定外の病名だ。
右半身マヒ、発する言葉もはっきりしない。脳の輪切り写真には、細胞が死んでいることを示す、白い部分が何箇所も写っていた。 主治医によると、治っても「要全介助の車椅子生活」とのこと。自宅での世話は無理なので、病院かリハビリ療養を兼ねた施設で余生を送ることになる。
体育の日の連休に親戚が集まり、亡くなった場合の段取りを打合せた。心の準備もできた。
祖母は、幸いそんな家族の予想を超える回復を見せている。右足は動くようになり、右腕も動くようになってきた。言葉も話し、ときどき会話が成立する。私の名前は思い出せないが、文句や痛みを訴えてもいい相手だということは、わかるらしい。
いつも不思議に思うのだが、心がへこみ気味のときに限って、知人から連絡が舞い込む。誰にも話していないのに、まるで見られているかのように励ますようなメールや電話がくる。いい知らせばかりだし、自分以外のことを考えられる時間もできて、うれしいものだ。
「リサイタルをやります」「ライブをするので聴きに来てください」「結婚します」「飲みにいきましょう」
ここ数年、家にいることが好きで休日に外へ出ることはほとんどなかったのだが、そういう時期が近づいているのかもしれない。祖母が面倒を見ていた庭の草花を眺めながら、そんなことをぼんやり考えている。